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最悪だ…この世の終わりだ…
私は、絶望の淵に立たされていた。
秋も深まりつつある10月、ごく平凡な毎日を送っていた私が、まさか、こんな事になるとは思ってもいなかった。
私は今、避難所となった小学校の体育館にいるが、妻と中学3年生の娘、小学6年生の息子と出会うことができていない。
私の名前は若林 宏(わかばやし ひろし)、妻の香織(かおり)、娘の玲奈(れな)、息子の翔太(しょうた)の4人家族である。
昨日の15時頃、私は会社のビル内で仕事をしていると、突然大きな揺れに襲われた。
これまで経験したことがない大きな揺れは、5分以上続いたように感じたが、その後の発表で3分を超える程度だったことが分かった。
職場内の机やロッカーは、めちゃめちゃに散乱していたが、幸い怪我をした社員はいないようだった。
私は、あわてて香織、玲奈、翔太の携帯電話に連絡したが、電話が通じなかった。
私は、社内の避難指示で急いで高台に避難したが、この高台からは、私の自宅、玲奈が通っている中学校、翔太が通っている小学校が一望できる。
避難した高台で、香織、玲奈、翔太の姿を見つけることができなかった私は、家族も高台に避難してくれていることを祈った。
問題は、その後だった。
地震から30分程度経過後、街全体が大津波に襲われたのである。
津波の高さは想像以上で、3階建ての中学校や小学校は、完全に波に飲み込まれていた。
私の自宅のある方向も、完全に波に飲み込まれており、絶望的な状況であることが理解できた。
家や車が、まるでミニュチュアのおもちゃのように、海の波に流される光景を目の当たりにして、私は涙が溢れ出て止まらなかった。
この日、私は家族と出会うことができず、避難所となった高台にある小学校の体育館で、夜を過ごすことになった。
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