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香織の行方がまったくわからないまま、仮設住宅での生活が半年過ぎた頃、市の職員から連絡が入った。
話しの内容は、香織の遺体の一部らしいものが見つかったという話だった。
私は、玲奈と一緒に市役所に行き、市の職員の話を聞くと、女性の左腕が見つかったということだった。
しかし、この日は、実際の左腕を見ることはできなかった。
市の職員がDNA鑑定をしたいという申し出があったため、私と玲奈は同意した。
DNA鑑定は、玲奈の粘膜を使って検査が行われたが、結果が出るまでに5日程度かかると告げられた。
そして5日後、市の職員から連絡が入り、女性の左腕と玲奈のDNAは、親子であることに間違いないという結果だと伝えられた。
私と玲奈は、妻の左腕を引き取るために指定された病院に行くと、市の職員が待っていてくれた。
市の職員に案内され、私と玲奈は、はじめて香織の左腕を見たが、私はすぐに香織の左腕であることに間違いないと確信を持った。
それは、香織の左手薬指に残っていた結婚指輪を見ることで、私は確信を持った。
私は、この左腕を葬祭業者にお願いして、火葬をしてもらった。
私と玲奈は、2人きりになってしまったのだと感じ、あらためて淋しさが込み上げてきた。
玲奈は、少しずつ元気を取り戻しているようで、高校生活を楽しんでいるように見えた。
仮設住宅での生活を続けることは難しいと考えた私は、玲奈と相談して、賃貸マンションに引っ越すことにした。
仮設住宅とは違って、さらに快適な生活ができるようになった。
避難所や仮設住宅を経験した私と玲奈は、普通の家に住めることが、どんなに幸せなことなのか、よくわかったような気がした。
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