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「ちょっと! どういうことよ、それ!」
二階から甲高い声が聞こえてきたのは部屋についてすぐだった。一通りの身支度を終え、さてどうしようかと思案していた矢先のこと。
声は耳を刺すような、攻撃的な女声だった。ヒステリーを起こしているのかきつい言葉が断片的に飛ぶ。女の罵声の後にはたしなめるような男の声が続く。
少ししても二人の口論は収まる気配を見せない。むしろ加速している。
「何かあったんでしょうか」
クオーツが廊下に出て、二階へと上がる。揉め事を看過できないのは神聖騎士の性なのか、面倒事にも首を突っ込んでいく。
彼は迷いなく階段を上った。
上に近づけば近づくほど、男女の言い争う内容がはっきりと聞こえてくる。
「誰よ、この女は! 私だけを愛すって言ってくれたじゃないの」
「誤解だティアモ。俺が真に愛するのは君だけさ」
「そうやって何人の女を落としたんだか!」
男女の修羅場と考えるべきだろう。内容が見えてくると、クオーツの足取りが目に見えて重くなる。
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