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「うう」
絞り出すような呻き声。クオーツのものだ。
心底行きたくないようだが、ここまで来て踵を返すという選択肢はない。意を決して最後の階段を踏み越えた。
二階も一階と同じく、左右それぞれ二部屋の扉がずらりと並ぶ。客人用の個室だろうそこを素通りして先へと進む。口論は廊下の終わり、ダイニングから聞こえていた。
「もう言い訳は聞かないわ。この間も女物のハンカチーフが出てきたじゃない」
「それは俺のツレが悪戯をけしかけたのさ。俺に無実の罪を着せるつもりだったのかな」
男女はダイニングの大きなテーブルに向かい合って座っている。正確には、女の方はテーブルに手をついて立ち上がっている状態で、男は優雅に足を組んで座っている。
女は華やかな顔立ちをしていた。高い鼻と睫毛を激しくカールさせた眼が妙に印象に残る、目鼻立ちが文字どおりくっきりした女。
プラチナブロンズの髪は毛先まで手入れが行き届いており、シャンプーのコマーシャルに起用したいほど艶やかだ。
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