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対面する男は、実は神聖帝国アルミナではちょっとした有名人だ。
鳶色の髪をオールバックにして、露にしている顔立ちは彫りが深く精悍。きりりとした眉と流し目のスタイルに多くの女性が魅了されるという。
服も上質なブランド品を愛用し、甘ったるい香水がトレードマークとも言われる。
グレアム・フォン・ラインハルト。
女たらし貴族として有名な、夜の華だ。
「ラインハルト男爵? 社交界の華と呼ばれる方が、どうして……」
クオーツもグレアムの名を知っているようで、驚きを禁じ得ない様子だ。
「ん? 俺の名前を知っている野郎が……って、神聖騎士がなんでこんな田舎町に」
グレアムもグレアムで、クオーツこと神聖騎士の登場が予想外だったようだ。戸惑ったように端正な顔が歪む。
白銀の薔薇をあしらった制服は「歩く権力」とも恐れられ、神聖騎士がいかにこの国にとって大きな存在かを知らしめる。
「確かに、僕は神聖騎士ですが。ある方の護衛でこの村に滞在しています」
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