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「護衛、ね。そうかそうか、任務ご苦労様」
グレアムは途端に表情を明るくして、ダイニングチェアに深く座り直した。組まれた脚はすらりと長く、三十路の男ならではの色香を漂わせる。
「騎士さんもこの屋敷に?」
「はい。何泊かお世話になる予定です」
「じゃあ俺とも無縁じゃないわけだ。知ってるだろうが俺はグレアム。こっちは婚約者のティアモ」
大きな手のひらが女性へと向けられる。ティアモと紹介された女性は視線をクオーツへと移した。
値踏みするように凝視された。瞬きする度に睫毛がせわしなく動く。
「……ふうん? ねえ、騎士さん」
「は、はい」
女性に免疫がないクオーツは緊張した面持ちだ。恐れと形容する方がふさわしいかもしれない。
「騎士さんは市民のいさかいを解決してくれるのが仕事よね?」
「……まあ、平和を維持することが行動理念ですが」
「じゃあこの男のこともなんとかしてちょうだい」
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