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そんな無茶な、と顔に書いてあった。クオーツの口元が変に引きつる。
「と、いいますと……」
「この人、根っからの浮気性なの」
ダイニングテーブルに叩き出されたのは上質なレースのハンカチーフ。先程口論のもとになっていたものだろう。想像に難くない。
「この間も私との約束をすっぽかして別の女のところに行くし」
「誤解だティアモ。あの日はラインハルト家の名代として舞踏会に出なくてはならなかった。君も納得してくれただろう」
「なんで三日連続で同じ言い訳を聞かなきゃいけないのよ!」
深い恨みが込められた金切り声にクオーツが顔をしかめる。ティアモはダイニングテーブルに両手を叩きつけ、日頃の恨み辛みをこれでもかと吐き出していく。
「この人はいつもそう。私に愛を嘯く割に言ってることは支離滅裂なのよ。矛盾と自己陶酔と口八丁手八丁でのらりくらり生きてるようなちゃらんぽらんなの!」
じゃあ別れればいいのでは、と言いたいが、きっとそうはいかない理由があるのだろう。
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