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婚約、というのは家から課せられた鎖だ。
神聖帝国アルミナは先進国と言えど、それぞれの世界でしか通用しない暗黙の了解がある。貴族が貴族であるために、権威ある家と懇意にする。
その手段として用いられるのが婚約だ。
ティアモがグレアムを愛しているかいないのか、本人の意思は無視される。ただ家を背負うものは家の掟に縛られ、家のために使われる。貴族というのも決して楽ではない。
「僭越ながら、婚約を破棄する予定はないのですよね」
「だって愛しちゃったんだもの!」
訂正が必要だ。ティアモはグレアムにぞっこんというやつらしい。
「愛してるからこそグレアムには私を見てほしいの」
「わかってるさティアモ。君の愛に俺は応えたい」
「じゃあその浮気癖をなんとかしなさいよ」
「ティアモ、わかってくれ。俺の愛は確かにティアモに注いでいる。しかし、俺の愛はあまねくすべての女性に注ぐべきだと神も仰せなんだ」
なんという傲慢な持論だ、と言いたげにクオーツの眉が動いた。
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