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「ティアモ。俺だって君を愛している。だからこうやって婚前旅行としてここに来たんじゃないか」
グレアムが甘い声でティアモを口説く。
「それならもっと華のある場所に来たかったわよ。ただのワイン視察でしょ」
私はそのオマケでついてきてるだけなんだから、とティアモが吐き捨てるように言う。彼と婚約できるのだから、ティアモもなかなかの家柄の娘なのだろう。
育ちが良いわりに口が悪いが。
「私ロゼは好きじゃないの」
「まあそう言うなティアモ。二人だけの時間を満喫しようじゃないか」
まだ何かいいたげだが、グレアムの言葉にティアモの怒りは鎮火していった。燻っている、が正しい形容にも思える。この二人は常々こんなやり取りでうまくやっているのだろう。
クオーツが大きなため息をつく。
「グルニエさんがいないから楽できると思ったのに」
グルニエはまだ部屋から出てこない。一人の時間を堪能する、というクオーツの野望は初手からあっけなく崩された。
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