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「その団服は神聖騎士の方とお見受けします。何卒、何卒解決してもらえませんか!?」
サリュはクオーツの肩を掴み、激しく揺さぶった。藁にもすがる思いというが、軟弱な外見とは裏腹な鬼気迫る懇願に真剣さを感じる。少なくともサリュは、この預言を真に受けている。
実例を見ているのだから信じざるを得ないのだろう。
クオーツは悩ましそうに眉根を寄せた。
「市民が困る姿を見るのは、神聖騎士として見過ごせません。サリュさんの心中は察しますし、お力添えしたい気持ちはあります」
「おい、騎士さん!」
「ですが……」
グレアムの怒号が飛ぶのと同時に、クオーツは逆接を使った。サリュの顔が曇る。
このときばかりはクオーツ・ジェスが縦社会の歯車、その一部にしか見えなかった。
「神聖騎士団が『組織』として動くのは、明確な事件性があるときだけなんです。預言といった抽象的なものひとつで騎士団が動くことは、ありません」
「……そんな」
サリュの顔は絶望色に染め上げられた。
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