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「マリさん、今とても困られておられます。」
「それは、どういう事でしょうか。」
僕はしゃがみこんで訊ねた。
「あの、その前にお名前お聞かせいただけますか。」
「僕はカツミといいます。」
「ありがとうございます、カツミさん。私はショーンと申します。ショーンーコネリーのショーンです。」
ショーンーコネリーという俳優がいるのは知っているが、直ぐには顔が思い浮かばなかった。
「それで、マリは今どこで何を?」
「マリさんは、今危ない人に捕らえられております。」
ショーンは立ち上がって話し始めた。
「あれは三週間程前の事です。公園で昼寝をされておられるマリさんを危ない人達は拉致をいたしました。」
どうやらこれから最悪の展開になるらしい。
「それでマリはど今こに?」
「はい、第2埠頭のC-4倉庫の中に監禁されていると思われます。そこは危ない人達のアジトになっております。沢山の猫さんや私達の仲間が拉致監禁されております。」
第二埠頭の倉庫とは隣町にある港の施設で昔は海外からの鉱石を受け入れる活気ある港だったのだけれど、今は工場が閉鎖されて廃虚になっている施設だった。
「そこには私の妹のジュディもおります。どうか救出にお力添えください。」
「わかりました。」
僕らは救出のための下見を今夜実行する事にした。
その晩、午前三時を回ったところで僕らは第二埠頭を見下ろす斜面に立った。倉庫の窓からはボンヤリとした明かりが見える。
「あの中にマリさんがおられます。」
「それに君の妹のジュディも。」
「はい。二人とも無事でいてくれるといいのですが、私の鼻ではそこまでは探知できません。」
僕らは音を立てない様に斜面を下り始めた。倉庫に近づくにつれて、肉や血液やそれらが腐敗したすえた匂いが漂い始め僕は顔をしかめた。
地獄を思わせる様な、まったく酷い匂いだった。
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