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「なめてんのか。」
「それは冗談かな。なめるどころか、触りたくもない。」
僕はそう言うと合図の仕草である鼻を触った。それを機に今まで虐げられていた動物達は一斉に踊りかかった。
犬さんや猫さん、そして爬虫類や鳥のみなさんなど、それぞれの特性を生かした攻撃を開始した。けれど危ない人達も金属バットやチェーンなどで武装していて、次々に負傷動物が出てきて形勢は有利とは言えなかった。それには動物の皆さんが長くゲージに閉じ込められていたために体力が落ちている事も影響していた。
次第に攻撃力を残す動物達が減り、危ない人達も肩で息する程に疲れを見せていたが、それにもまして動物達が戦闘意志を無くして行く様子が見てとれた。僕は戦闘中止の掛け声をかけ、互いに睨み合う形になった。周りには千切れた動物達の体が散乱し、血の匂いが立ち込めていた。
「動物達を解放してくれ、僕が残るから。」
「いい度胸じゃねぇか。オメェの言う通りにしてやる。」
「嬉しいわ、いい子ちゃん。やっと仲良くできるのね。」
僕は動物達に逃げるように指示したが彼らはピクリとも動かなかった。
「これ以上、君達を傷つけることは出来ない。頼むから、ここから出て行ってくれないか。」
すると、マリがツカツカと歩み寄って来た。
「カツミ、私達は何処にも行かないわ。ずっとあなたと一緒にいる。私達は人間の様に簡単に仲間を裏切ったりはしないの。」
マリの言葉に、動物達は一斉に頷き力を取り戻したかのようだった。
危ない人達は、僕らに向かって武器を打ち下ろした。僕らはそれをかわしながら最後の戦いに挑んだ。僕の足下にはマリが、そしてジュディまでもが見えた。そして、何より嬉しかったのは、ショーンが仲間を連れてやって来てくれたことだ。
「生意気なんだよ、ぶっ殺してやる。」
「なめないでね、いい子ちゃん達。」
次々に倒されていく仲間を乗り越えて僕らは挑んだ。力の差は歴然だったけれど僕らは怯まなかった、こんな事を終りにさせるためにも。
しかし僕らは次第に圧されて、積み上げられたゲージの前まで追い詰められた。
「おらおら、そん中に入れよ、許してやっから。」
「そうだよ、仲良くしようょ。」
「ヒャッホー、ウラウラヘェレ。ウザッテエ。殺サレテェカ。」
と危ない人たちは、半ば陶酔した表情で叫んでいた。
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