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「あなた、意外と優しいんだ。」
「えっ?」
「この辺りでのあなたの評判、とても悪いよ。」
「そうですか。」
僕は彼女を膝に抱き、背中を撫でながら話を聞いていた。
「すれ違っても挨拶もしないし、餌もくれないって。」
「すみません、どうも無愛想で。」
「でもこれでわかったわ、悪い人じゃないってこと。」
「ありがとう、許してくれるんだ。」
「まあ、今回の事は事故だった訳だし、私にも、あんな所で寝ていたという非がある訳だし。」
「名前を聞いてもいいかな。」
「私たちノラには名前何か無いのよ。好きに呼んだらいいわ。」
「うん?名前ね、難しいな。」
「何をそんなに見てるのよ。」
「あっごめん。どんなイメージの名前が似合うかなと思って。」
「変な人ね、ミケでもマリでもいいじゃない。」
「うん、なるほど、じゃマリさんでいいかな。」
「さんはいらないわよ。じゃあなたの前では、マリということで。」
「うん、マリ。良かったら、ちょっと寄っていかない?いい物があるんだ。」
「そうね、どうせ予定も無いからいいわよ。」
「じゃ、行きましょう。」
僕は彼女を抱いたまま部屋に向かった。マリは満更でない顔をしてすましていた。この日から僕らの同棲が始まった。
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