猫ふんじゃった

3/4
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
「あなた、意外と優しいんだ。」 「えっ?」 「この辺りでのあなたの評判、とても悪いよ。」 「そうですか。」  僕は彼女を膝に抱き、背中を撫でながら話を聞いていた。 「すれ違っても挨拶もしないし、餌もくれないって。」 「すみません、どうも無愛想で。」 「でもこれでわかったわ、悪い人じゃないってこと。」 「ありがとう、許してくれるんだ。」 「まあ、今回の事は事故だった訳だし、私にも、あんな所で寝ていたという非がある訳だし。」 「名前を聞いてもいいかな。」 「私たちノラには名前何か無いのよ。好きに呼んだらいいわ。」 「うん?名前ね、難しいな。」 「何をそんなに見てるのよ。」 「あっごめん。どんなイメージの名前が似合うかなと思って。」 「変な人ね、ミケでもマリでもいいじゃない。」 「うん、なるほど、じゃマリさんでいいかな。」 「さんはいらないわよ。じゃあなたの前では、マリということで。」 「うん、マリ。良かったら、ちょっと寄っていかない?いい物があるんだ。」 「そうね、どうせ予定も無いからいいわよ。」 「じゃ、行きましょう。」  僕は彼女を抱いたまま部屋に向かった。マリは満更でない顔をしてすましていた。この日から僕らの同棲が始まった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!