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翌朝、僕は息苦しさを感じて目が覚めた。気がつくと、マリが僕の顔の上に乗っていた。
「苦しいよ。」
僕はつい邪険に彼女を退けた。マリは軽やかな身のこなしで、颯爽と立ち上がり緑の瞳で僕を見つめて言った。
「優しく起こしてあげたのに。」
「優しくはなかったと思うよ、苦しかったし。死ぬかと思った。」
マリは気にも止めない様に細長い尻尾を立てて、そのままお出かけになった。
「気まぐれな奴だな。」
僕は改めて猫の習性について思った。とにかく毎朝こんな起こされ方されたら多分死ぬ。今夜は起こし方について話し合おうと考えながら大学に向かった。
大学から戻ると、まだマリは帰っていなかった。どこへ行ったことやら、彼女には何人かの飼い主がいて名前も複数あるらしいので心配はしてないけれど、やはり少し寂しい。猫の鳴き声が聞こえてくると窓を開けて声のする方へ呼びかけてみたが反応はなかった。そしてその日、マリは帰らなかった。僕は久しぶりに独りで夕食を食べたのだった。
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