3人が本棚に入れています
本棚に追加
マリが消えて一週間が過ぎた頃だった。何時もの様にバイトを終えて帰って来た僕を、灯りの付いた部屋が迎えてくれた。
「今朝は消し忘れたかな。」
独り言を言いながら鍵を開けようとした時、異変に気が付いた。
『鍵が開いてる。』
僕は最悪の状態を覚悟してドアを開けた。
すると部屋には一人の女が寛いでいた。
「お帰りなさい。」
いきなりそんな事言われる筋合いはなさそうだが、一応丁寧に尋ねてみた。
「どなたですか。」
彼女は会心の笑みを浮かべながら、
「わからない?」
と一言のたまった。
『わかりたいさ、こんなラッキーな事は滅多にあることじゃない。いやほとんど奇跡に近いだろう。自分の部屋のドアを開けたら、いきなり素敵なコスチュームの女の子が挨拶してくれるなんて頼んでも無理だよ。大体頼み先がわからない。』
「ええと、以前どこかでお会いしましたっけ。」
僕は、弛みそうになる口元に力を集中しながら答えた。
「うん、あなた私を踏んだでしょ。」
僕は一度にすべてを理解した。コスチュームの意味さえ。猫だ。
「マリ?」
彼女は猫パンチの手をして笑った。
僕は改めて彼女?をみた。
『そう言えば、顔はともかく、胸から腰のラインはマリを彷彿とさせる。』
「何?どしたの?」
「いや、あまりにビックリしたものだから。」
僕はドギマギしながら答えた。
『それにしても素敵です。猫のコスチュームは、昔、小雪さんがテレビのCMを、そんな衣装でやってるのを見たことあるけど生で見ると一層刺激的だったりするんだ。しかも二人きりの部屋のなかで。この後のことについては君の妄想力にまかせるよ。でも一つ言えることは、アンビリバボーな一夜だったという事。』
ヤレヤレ
最初のコメントを投稿しよう!