猫化けるんだ

4/5
前へ
/18ページ
次へ
 アンビリバボーな夜を過ごした翌朝、部屋にはマリが布団の上で丸くなって眠っていた。僕は白く霞む目を擦りながら彼女を見たが、やはり『猫』に戻っている。 「おはよう、マリ。」  僕は彼女の背中を撫でながら呼んでみた。しかしマリは所謂、猫としての正しい振る舞いをするだけだった。 『もう、彼女には会えないのかな。』  やや悲観的な観測を抱きながら僕は朝食を作り、マリにも所謂、猫メシを作った。僕らは黙々と食べ終え、それぞれの生活を始めた。つまり僕は大学に向かい、彼女は散歩に出かけた。 「悪い猫に気を付けてるんだよ。」  僕は彼女を見送った。  その日のバイトを終えた僕は、疲れた体を何とかアパートまで引きずって帰ってきた。階段を上がり部屋の前に立つと中から明かりが見えた。僕はマリの居ることを願いながら、ドアを開けた。 「お帰りなさい。」  彼女の声だ。 「ただいま。」  今までの疲れなど吹き飛ぶような勢いで僕は彼女に声をかけた。 「いたんだ。もう会えない様な気がして心配したよ。」 「あら、ごめんね。話さなかったかな。」  彼女は淡々と話した。 「こうしていられるのは夜の間だけなのよ。朝には猫に戻るの。」 「そうだったの。うん、わかるような気がする。」 『それはそうだよ。やはり怪しげな振る舞いは夜でしょう。それに昼間から彼女がいたら、僕は家から出られなくなりそうだ。』  何れにせよ、彼女との再会を果たした僕は、再びアンビリバボーな夜をすごしたのだった。                              フゥ
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加