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アンビリバボーな夜を過ごした翌朝、部屋にはマリが布団の上で丸くなって眠っていた。僕は白く霞む目を擦りながら彼女を見たが、やはり『猫』に戻っている。
「おはよう、マリ。」
僕は彼女の背中を撫でながら呼んでみた。しかしマリは所謂、猫としての正しい振る舞いをするだけだった。
『もう、彼女には会えないのかな。』
やや悲観的な観測を抱きながら僕は朝食を作り、マリにも所謂、猫メシを作った。僕らは黙々と食べ終え、それぞれの生活を始めた。つまり僕は大学に向かい、彼女は散歩に出かけた。
「悪い猫に気を付けてるんだよ。」
僕は彼女を見送った。
その日のバイトを終えた僕は、疲れた体を何とかアパートまで引きずって帰ってきた。階段を上がり部屋の前に立つと中から明かりが見えた。僕はマリの居ることを願いながら、ドアを開けた。
「お帰りなさい。」
彼女の声だ。
「ただいま。」
今までの疲れなど吹き飛ぶような勢いで僕は彼女に声をかけた。
「いたんだ。もう会えない様な気がして心配したよ。」
「あら、ごめんね。話さなかったかな。」
彼女は淡々と話した。
「こうしていられるのは夜の間だけなのよ。朝には猫に戻るの。」
「そうだったの。うん、わかるような気がする。」
『それはそうだよ。やはり怪しげな振る舞いは夜でしょう。それに昼間から彼女がいたら、僕は家から出られなくなりそうだ。』
何れにせよ、彼女との再会を果たした僕は、再びアンビリバボーな夜をすごしたのだった。
フゥ
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