猫化けるんだ

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 あの夜を最後に、その翌朝にはマリはまるで煙の様に消えてしまった。今日で三週間になるけれどまったく消息が掴めない。多分どこかで元気にしているのだろうけれど気になる事件も起きている。それは、この周辺で小動物の虐待が起きているということだ。  それは小鳥達の受難から始まった。雀や鳩などが次々に空気銃やボーゲンで殺られ始めた。そして事件は、次第にエスカレートするようにターゲットの動物達を大型化し、最近では四歳の女の子が太ももを空気銃で撃たれる事件まで起きている。  この事件について地元の警察は凡犯人の目星は付けているらしいが、まだ犯人逮捕の知らせはない。マリはそんな事件に巻き込まれる程ドジではないと思うが気になる事件ではある。  その夜もバイトを終え重い足取りで歩いていた。そしてアパートまでおよそ二百メートル程に近づいた時だった。 「今晩は。」  と、突然後ろから声をかけられた。振り向いたが誰もいない。しかし空耳にしてははっきりとし過ぎている。 「今晩は。」  再び声が聞こえた。その声のする方を見下ろすと小型の犬が見上げていた。 「突然お声をかけてしまい、すみません。驚かせてしまいましたか。」  足元の小型犬が頭を下げながら言った 「いえいえ、大丈夫ですよ。少しは驚きましたけど。」  『少しじゃないけれど、取りあえず初対面でもあるし柔らかく表現してみたわけです。』 「もしかしたら、マリさんの最近のご主人様ではありませんか。」 「マリをご存知ですか。」  僕は第二の衝撃波をまともに受けた感じがした。 「ですから声を、おかけした次第です。」                   なるほどねってオイオイ
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