第1章

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久しぶりに帰った実家は何も変わっていなかった。 少し広い二階建て、今は老いた父親と最近になって妹夫婦が住んでいるらしい。全く忌々しい。俺がどんな思いで今まで過ごしていたかも知らずのうのうと幸せになっているコイツ等がただ憎い。もうさしてコイツ等に思い入れも無い。火でも付けてぶっ殺してやる… 短い廊下を通る妹と子供に気付かれる事も無く忍び込み、台所に入る。ふと食器棚が目についた。俺の茶碗が無い。まあ当然だろう。使う者がいなくなったんだ。あの糞親父の事だから捨てたに決まってる。 …そうだ、より絶望してもらう為に上にあるだろう子供部屋からも火を付けてやろう。そう思い下での火の準備もそこそこに上に向かい、嘗ての俺の部屋に入る。其処にはまだ小さい子供が一人いて、おもちゃを振り回して遊んでいた。 それにしても何だか広い部屋だな…俺が住んでいた時はこんなに広かっただろうか…?増改築した様子も無く、俺が住んでいた頃のように10畳と言った所か… …そうか!ベッドだ!俺が使っていたベッドが無くなっている。それと窓際にあった勉強机、あれらが無くなっている。 ……待て、家具の処分は結構時間が掛かる筈だ。カーペットは俺が物心つく頃から敷いてあった空色のカーペット、其処に家具が置かれていた痕跡すらない。最近まであったであろう俺のベッドと勉強机が完全に消失している。 どういう訳か分からなかったが、俺は酷い違和感を感じていた。ふと部屋にあった鏡が目に入り、其処には俺の姿が映っていた。 ……!?、初日に確認してからずっと映らなかったのに何故!?慌てた俺は急いでその場を後にした。
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