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真新しい制服はまだ着慣れていなくて、ネクタイは曲がっていないかだとか気になって仕方がない。
「似合ってる?レクト」
女神は制服が気に入ったようで、くるりと一回転してみせた。
長い茶髪の髪ツインテールが風に乗って、サラッと軽快に靡いた。
セーラー服の襟は真紅で白色のラインが入っていて、胸元には大きい黄色いリボンがあしらわれていた。
黒いプリーツスカートには2本の線が入っている。
そして太ももまでの黒と白の横縞模様のニーハイソックス。
「別に変なところはないぞ」
「そーゆーんじゃなくって……」
彼女は何故か唇を尖らせながら不貞腐れてしまった。
自分は何か失言をしてしまったのだろうかと言動を振り返ってみたが分からなかった。
そして実は彼女、『普通』ではない。
「ねーねー!それよりレクト!昨日は殺しの依頼が3件もあったの!」
――裏世界で超有名な殺し屋、通称『サタン』と呼ばれている、恐ろしい殺し屋なのだ。
その名の通り……いや、サタンよりも恐ろしい殺し屋である。
地獄の極悪な悪魔の方がまだよっぽどかわいらしい。
「そうか……そりゃーよかったな」
昨日は何人殺したーなんて聞いても、もう驚かなくなってきた自分も恐ろしい……
「おかげで今月のお小遣い超絶よゆー!帰りにカラオケにでも行こうよ!」
おまけに、普段の能天気で明るい性格からは想像できないほど冷酷らしい。
殺し方がものすごく惨たらしいだとか、テレビのニュースで見たことがある。
一緒にテレビのニュースを観ている時、殺人事件が報道されると高確率で
『あ、あれ殺ったの私だー』と言うので、本当に怖い、恐い。
俺もいつか殺されるのではないかと少し不安だったりする。
「あ……あぁ……いいな、カラオケ……」
人を殺して得た金だと思うと、頗る気分が悪い。
俺はぎこちない笑顔で言った。
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