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「次は、新入生代表の言葉。リンネラ・フラミアさん、お願いします」
司会の女性がプログラムを読み上げると同時に、カッカッと靴音がした。
そして彼女が壇上に立った瞬間、ざわめいていた会場は静寂に包まれた。
一匹の精霊が舞い降りるかのごとく、彼女は静かに真っ直ぐ式場を見据えた。
壇上にゆっくり上がってきたのは、腰まである、カールした長い銀髪、サファイアのような碧眼を持つ少女。
華奢で細くスラッとした手、スカートから伸びる、レースをあしらったリボン付きのニーハイソックスの足。
その姿はまるで――美しく洗練された人形のようだった。
「わっ、めちゃ可愛い!あの子!」
「お人形さんみたーい!」
彼女は男女問わず、たくさんの注目を集めている。
「へー、彼女が成績優秀者か」
毎年四季島学園は、入試の成績優秀者が新入生代表の言葉を言う事になっている。
つまり彼女、リンネラ・フラミアが今年の最成績優秀者となる。
周りが色めきだつ中、俺は敏感に彼女のオーラを感じ取った。
「……あたたかな春のおとずれと共に、私たちは入学式を迎えることができました」
彼女はどこからか引っ張ってきたような定型文を、機械のように読んでいる。
感情のこもらない無機質な声、眉ひとつ動かさぬ無表情、病人のように蒼白な顔。
唐突に背筋が凍りつき、すうっと冷たい汗が流れた。
まるでメデューサに見つめられて石化されたように、金縛りのような感覚に陥った。
彼女は何か、恐ろしいモノを持っている。
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