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肌着の上に着たガウンの袖をレオナルドは引っぱりながら
「それで、介添えがどうのっておっしゃってましたが」
「床入りの儀式にあたっては、王子は王が、王女は王妃が介添えをするっていうのが通例でね。本来君の介添えは陛下がするはずだったのだ」
「そうなんですか」
「考えてもみたまえ、例えば君がエリカの介添えになったとして、彼女の服を脱がすことが出来るかね?」
「わぁ、きれい」
エリザベスが沐浴後に着せられた真新しい亜麻のシュミーズと薄衣で出来たローブに喜ぶ様子を見て、エリカは自分の事のように嬉しく感じていた。
「それではお先に、お姉さま」
王妃の到着の知らせを受け、エリザベスは嬉々としながら神殿の控えの間を出た。
周囲にいた神官達も随行のために出ていったので、部屋にはエリカとエルフリーデだけが取り残された。
「ねぇ、エルフリーデ」
「はい、エリカ様」
「いいよ、何か言いたいことがあるんでしょ?」
「はい。城内で暗殺が横行しているようです。お食事なさるときは銀の食器をお使い下さい」
「誰か暗殺されたの?」
「鎧で窒息したと言われている騎士を覚えておいでですか?」
「え? うん、そりゃね」
「槍の柄に毒が仕込んであったようなのです。公にはなっていませんが」
「どうやってそれがわかったの?」
「オットー伯の従者が槍を回収に出て、拾い上げてしばらく歩いたら倒れたのです。近くに私の手の者がいて、従者を見たら息が絶えていたそうです」
「そう・・・」
「それで騒ぎになったのですが、いつの間にか槍はそこから消えていた、と」
「誰まで知ってる?」
「その場にいた者の他には私とエリカ様だけです」
「オットー伯の従者と言ったね。もしかして、その死んだ騎士ってオットー伯だったの?」
「はい、試合開始前に紋章官が読み上げたはずですが」
「会場が騒がしくて聞き取れなかったのよ」
「王から不名誉とされたとしても、伯爵の死がまったく話題にも上らないというのも不自然かと思い、お耳に入れたまでです」
「ありがとう、だから好きよ、エルフリーデ」
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