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 王の儀式の間は通路のすぐ脇まで来賓や王国の貴族で埋まり、熱気が籠もっていた。  2組の床入りの儀式が見物できるということで期待が高まっていたが、後ろの方にいる爵位の低い者は前列を占める来賓や高位者達が飽きるか別室の酒肴に食指を動かすかして早々に退出してくれるのを祈っていた。  貴族達の視線の先には天蓋のついた儀礼用ベッドがある。 既に架台には藁が敷かれ、その上にキャンバスを敷いて羽毛を広げ、毛布にたくし込んだ後に香りのついた亜麻のシーツで覆い、花の刺繍が施されたフットシートが掛けられている。  重い音を響かせて扉が開くと王妃とエリザベス、そしてシーツと花かごを携えた随行の神官がゆっくりとした足取りで入場した。  王妃は古式に則り、介添えするエリザベスをフットシートに座らせこの儀式に立ち会う貴族達にじっくりと観察をする時間を与えた。 そしてエリザベスの斜め向かいに立つと貴族達の視線を出来るだけ遮らないよう座らせたままローブとシュミーズを脱がせ、ベッドに横たわるよう促した。  シーツを持った随行の神官は、エリザベスの胸から下の部分に2人がかりで亜麻のシーツを被せた。 花かごを持った神官がシーツの上から原色の香りの強い花弁を撒き、花嫁を飾りつけた。 「子供だな・・・」 「しっ」  子供の婚儀は珍しいことではないので、これはエリザベスの体型を見ての感想であろう。さすがに失礼この上ない発言主に周囲が黙れと言う圧力を加えた。  準備が整ったという合図を受けて再び扉が開き、王とハロルドがゆっくりと入場した。 ハロルドは貴族達に向き直ることはなく、ベッドの前で肌着を王に持ち去られると、花で彩られたシーツの中へ潜り込んだ。  エリザベスは適齢期以前の少女のため、ハロルドが寝台に入った時点で結婚は成立し、王国とフレット公国との同盟も成立をした。 「確かに見届けました」 フレット公国の公使は王に一礼をし、王も頷いた。  寝台の中ではハロルドとエリザベスが寄り添って口付けを交わしているが、これは国の使者にしてみればおまけのようなものである。 「続きは部屋でやれ」 これ以降語り継がれることになる、試合場で発したのと同じ言葉を国王は発した。もちろん次にもう一組の予定がなければこのまま皆で続きを見物することになるのだが。 
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