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「誰だって一緒だろう? 負けるんだから」  王国の者は皆、最初の試合は第1王子に「勝たせる」為の試合であることくらい熟知していた。 だからこそ、最初の試合はおとなしく酒でも飲みながら見ているわけであるが・・・ 「落ちた」 「ん?」 「なんだ、トーマス見ていなかったのか?」 「あ、よそ見してた」 「しょうがない奴だな。今王子の槍が届いた瞬間に相手がぱっと馬から落ちて綺麗に負けたぜ。ああ、面白くねぇ」 「面白くないなら見なければいいじゃないか」 「他に何の楽しみがあるってんだ。お、第2王子が出た」 「うわぁ、重装甲だな」 「第1王子が胸当てしか着けてなかったからな」 「相手も重騎兵だ」 「いや、あれは馬を飾っているだけで鎧はそうでもないぜ」 「始まった!」 「行けっ!」 「あ、惜しい」 「滑ったな、でも落馬したぞ」 「王子も馬を下りた」 「抜いたぞっ!」 「抜いたなっ!」 「やれ、やれっ!」  双方下馬しての剣戟が始まったため、会場は盛り上がり、歓声で包まれた。 「決まった、王子の勝ちだ!」 振り下ろした剣が相手の兜を直撃し、兜は割れなかったものの相手はその場に倒れ込んだ 「ん?」  下馬状態で相手が戦闘不能になった場合、距離を置いて立ち、紋章官が勝者を称えるのを聞くのが通例である。 「おいおい、続ける気か?」 会場には殺伐とした野次が飛んではいるが、別に野次を飛ばす者の期待に応える義務はない。 「うわぁ、薄笑い浮かべながら止め刺しやがった」 「ひでぇ」 「銀の鎧の騎士か・・・」  ハロルドの対面にいる騎士は紋章のない銀の鎧を着て、兜のバイザーを下ろしている。馬にも銀の装甲を着けており重そうだ。 「腕は立つようだな」 騎乗姿勢と槍の構えから,相当な訓練を積んでいるのが分かる。 「同じ条件なら、相当手ごわいだろうが」  表情こそ見えないが、第2王子のおかげで長くなった待機時間は重く窮屈な鎧を着けている相手には不利に働いているはずである。 ハロルドは自分の有利な部分を最大限活かすことにした。 「始めよ!」  合図と共に駆け出したハロルドの馬はすぐに疾走状態になって安定したため、槍先を相手と交差する未来位置へぴたりと向けることができた。 まだ上下動から抜け出ていない銀の鎧の騎士の槍先はハロルドと交差する瞬間、ハロルドを捉え損なって横に滑った。
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