高樹のぶ子「水脈」

高樹のぶ子「水脈」|（文春文庫）

「水卵」では、故郷の墓に父を参ったわたしが幼い頃の友人の死を知り愕然とするが、その娘の話を聞き、一つの記憶を甦らせ、水卵を吸う。

　水卵とは鶏卵の出来損ないで殻がなく、今にも破れそうな薄い皮に包まれた卵のこと。

　女流文学賞受賞が首肯ける超高密度短編小説集。

　大傑作！

　わたしは自分が好きな文学作品を他人に薦めないが、読む機会があれば、読んで損しない短編集だと言い切ることは簡単。