それは入学式の朝のこと

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*** ことの始まりは朝に遡る。 今日は高校の入学式。その10分前。生徒が次々と体育館に集まっていく中で僕は何故か面識の無い中学の同級生に呼び出された。 しかも女子。 地味に目立たなく生きてきた僕にとってあるはずのない接点に、何かしでかしたのだろうかとドキドキしながら校舎裏に向かった。 校舎裏には既に女子生徒が僕に背中を向ける形で立っていた。あの子が僕を呼び出した子なのだろうか?背中になびく綺麗に巻かれた茶色の髪。後ろから見ただけでも美人だとわかる。 「あ、あの…」 僕はなけなしの勇気を振り絞って、少なくとも今年初の自分から女子に話しかけた。 ゆっくりと振り返る女子生徒。 靡く長い髪。 向けられる大きな瞳。 つり目の瞳は気の強さを感じさせる。 見つめられて心臓が速く鼓動をうつ。彼女は、僕の通っていた中学でも3本の指に入る美人として有名だった四宮若菜さんではないか。
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