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男の話を聞いて、俺は気づいた。
同じだと。
今の俺と男の今の立場が、その話ではソックリそのまま同じなのだと。
ちょっと待て……ウソだろ?
『俺は知っていたからね、その動画の末路を。迫る殺人鬼がどう処刑を行なうのか、を』
まるで懐かしむかのように遠くを見つめる男。
その先には重そうな鉄の扉があった。
ガチャッ……ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ。
遊んでいるかのようにドアノブが左右に転がる。
そのノブを握っている手からは、真っ赤な血が滴り落ちていた。
『だから叫んだ! 逃げろってね。でも、友達は逃げずに、何かを見つめていた』
何か。
その正体がなんであるのかを予想できてしまった。
『友達は手を動かしながら言ったんだ。「ごめんな」ってな』
そう言いながら、男は右手を高く掲げた。
カチャ……リ。
同時に何かが開く音がした。
ギキィ……。
錆びて軋む音。
男の目の前で、とうとう扉が開いていく。
『俺の友達が観ていたものはね……』
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