処刑動画

5/14
前へ
/14ページ
次へ
えっ? 男の声がして、心臓が跳ねたような気がした。 まさか、今……俺の言葉に反応したのか? 「お……俺の声……聞こえて?」 その言葉に反応した男は、俯き加減に視線だけをこちらへとよこした。 『さっきから言っている。聞こえてるよ……』 会話が成立してしまった。 ウソだ……ろ? これは動画で、過去に撮影されたものだ。 実況なんかじゃないのに、話かけられるわけないじゃないか。 だが、現に俺と男は会話をしている。 はぁ? 意味がわからねぇ……。 完全に混乱した。 俺は思わず部屋を見回す。 どこかにカメラでも仕掛けられているのかと、不安になったのだ。 これは友達が仕組んだドッキリで、やらせか何かなんじゃないかと思った。 『これは現実だ……諦めろ』 モニター越しに、男が言った。 「現実? そんなわけ……」 『じゃあ、なぜ俺らは会話できている? 説明できるのか?』 男の言うように、説明などできるわけがなかった。 「な、なんでこんな……」 鼓動が徐々に速さを増していくようで、マウスを握る指先が波打つようだった。 気づけば、大量の汗が全身から吹き出している。 『なんでか、なんて俺に聞くなよ。ただ言えることは、俺もお前と同じ側に居た……』
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加