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部屋を囲むようにして通路があった。
『そうか……やっぱり同じだ。悪いが、ヤツが近づいてきたら、そこから実況して欲しい』
「じ、実況!? そんなのできるわけ……」
『頼むよ!! 俺の命がかかっているんだ!! もし助かったら、何でも望みを叶えてやる! 金が欲しいってんなら、家を売ってでも払うから!! 頼むよ! 死にたくない!!』
男は扉をドンッとひとつ叩いて、その場に膝をついた。
命……この男の命が……かかっている。
そう思ったら、急に尿意をもよおした。
意識せず、手が震え出す。
俺がこの男を助けなければ、俺は人殺しの補助をしたことになってしまう……。
途端に降って沸いたこの状況に、どうしていいのかわからなくなった。
夢なら覚めてくれ。
悪い冗談なら、今すぐに種明かしをして欲しい。
懇願するような気持ちで、意味もなく部屋中を見渡す。
しかし、シンと静まり返るだけだった。
『ガララッ……ズシャ……ビチャビチャ……』
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