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奇妙な音がして、画面に目を戻す。
いる。
影になっている左上から、何かがチラリと見えた気がした。
「ヤバイ……なんか来た……」
俺の呟きに、男の体が震える。
『ヤツ……だ……逃げないと』
「逃げる!! っつたって、どう逃げるんだよ? アンタ、武器もなにも持ってないじゃないか!?」
俺は迫り来る物体を見つめながら叫んだ。
『どうし……どうしよう……殺される……いやだ……いやだ!!』
さきほどまで冷静を装っていた男だったが、とうとう理性が吹き飛んだのか、ドアをけたたましく叩き始めた。
「お、落ち着けって……アンタ……そのスーツの中に、何か使えるもん持ってないのか?」
そう言うと、男は慌てて胸ポケットに手を当てた。
続いてスラックスに手を滑らせると、何かに行き着いたように手を止める。
『何か……ある』
「手を止めるなって! 何があったのか、今すぐ確認してみろよ!」
男は俺の指示に従い、ポケットから何かを取り出した。
『ス……スマホ……だ』
「スマホ?」
『あぁ……クソ! 武器なんかじゃねぇ……こんなもの、今さらなんの役にもたたねぇじゃねぇか!!』
そういうと、男はスマホを握り締めてその場にヘタリ込んだ。
俺は唖然としながらも、奇妙な音を立てて近づく殺人鬼を見た。
距離的にあと6、7メートルほどだろうか?
「諦めるなって……そうだ! 裸電球を取ってこいって! それを持って扉の影に隠れて、ヤツがはいってきたらそれを頭めがけて投げつける。怯んだ隙に逃げるんだ!」
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