12人が本棚に入れています
本棚に追加
咄嗟に出た打開策だったが、我ながらイケるかもしれないと思った。
『バカか……そんなんで、勝てるわきゃねぇ……だろ……』
うなだれた男はその場に尻をつく。
もう諦めてしまったのか?
そうこうしているうちに、水が滴るような音と金属音が混じった音が、扉に近づいていく。
『ズガガガガッ……ネチャッ……ズルズルッ……ガチャッ……』
男の声ほどの大きさの音。
それが最後の角を曲がろうとしていた。
その正体は影になって見えないが、チラリと見えるチェンソーのような金属と、真っ赤に染まった脚だけを視界に捉えることができた。
「もうすぐ来るぞ! 頼むから! 立ち上がれって!」
画面を鷲掴みにしながら、男に呼びかける。
認めたくないが、有り得ない事態が起きている。
これは夢でも冗談でもなく、現実だ。
だから……!
『クククッ……あ~ぁ、そういうことか』
最初のコメントを投稿しよう!