第5章

2/122
1663人が本棚に入れています
本棚に追加
/771ページ
閉められた玄関。朔ちゃんのいなくなった部屋。 私はようやく目を開けた――。 静まり返っているその部屋で、暴れているのは私の心臓だけ。ベッドに横たわったまま、しばらく動けないでいた。 張りつめていた緊張の糸を切るかのように、私は大きく息を吐いた。 呆然自失状態。今身をもって体験中である。全てが私には突然の出来事だった。 朔ちゃんが……私を好きって言った。私を誰よりも好きだと言った。 あの! あの朔ちゃんが! お隣に住んでた朔ちゃんが! 子供の頃から知ってる、私の朔ちゃんが! 私をずっと前から好きだったと言った――。 そして、数え切れないほど私に『キス』した――。 どうしよう……朔ちゃんとキスしちゃった。それも何回も…… 朔ちゃんとキス、朔ちゃんとキス、キス、キス、キス かあ~、 急に顔から湯気が出てる気がした。 は、恥ずかしい……先程の濃厚すぎるキスの記憶に顔が真っ赤に染まる。両手を顔を覆い、キャーと頭の中で絶叫。 ベッドの上で縮こまりゴロゴロと一人でもだえる未希。その頭の中は完全パニックだ。
/771ページ

最初のコメントを投稿しよう!