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それはただ、そこにいた。
ずっと探していた【闇】は深く、暗く、そして…
とても寂しげに見えた。しかし、
「下等な人間どもよ。我が闇を知れ」
【闇】が僕らに手をかざすと、どこからとも無く魔の者達が襲い掛かってきた。
「フィリオ!光を…っ!!」
兄さんの声に我に返った僕は、急いで祈りを捧げる。
すると僕の身体から眩い光が溢れ出し、辺りを包んでいった。もちろん、【闇】すらも。
「さすが【光の神子】様だ!」
「すげぇ光だ…!」
「おい見ろ!傷が癒えていく…!」
【闇】に群がる魔の者たちと戦ってくれていた兵士の人達の傷が僕の光で癒えていく。そうだ、僕の光は癒しの光。世界が平和で安らかなものになる為にここまで来たんだ。僕が、僕の光が…!
【闇】を照らすんだ!!
力が大きく膨らむのが分かった。
流れてくる光。僕は精一杯の祈りを込めた。
…光が、全てを包んでいく。
もう何も見えない。兄さんも、アーガイルさんも、兵士の人達も魔の者も…。
なにもかも…。
これで世界は救われる。
「光の神子よ」
何も無いはずの空間にはっきりと響く声がした。
光で満ちたはずの空間に、1人その人は立っていた。
その人は、白い空間に不釣合いな黒を纏っていた。【闇】だ。
「どうして…」
「お前では足りない」
見えるもの、聞こえた言葉が信じられない。
足りない?何が?どうして?
「お前では足りないのだ」
「足りないってどうして?こんなに光が満ちてる、みんなだって眩しくて見えてない程の光が!ここには確かに光で満ちているんだ。なのに、どうして貴方は消えないの?どうして【闇】が見えるのさ…!」
浮き出た【闇】が、静かに笑った。
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