宇佐見くんのサグライフ

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 オーマイガー! 最悪だ……この世の終わりだ……なんて嘆きをホームルーム中の教室に響かせるわけにはいかなかった。  わたしにできたのは、恨みをこめて隣席のヒップホッパーに冷たい視線を送るだけだった。 「YO YA YA! チェケラ! アイアム宇佐見エーケーエーヒップホッパー宇佐見! ヨロシクPOW!」  いや、知ってるし。ああ、もう。見てるだけでウザい。  自称ヒップホッパー宇佐見くんは両拳を握り、親指だけ立てて自分を指さし、ドヤ顔を決めてくる。その顔にヒップホップ要素は皆無だ。それよりも気になるのは、ボタンが全部はずされた学ランから覗く真っ赤なシャツ。そこにデカデカとプリントされた英字のほうだ。やたらと目につくから、ついその英字を読んでしまった。 『I AM HIP―HOP!』  LOVEじゃないんかい! とツッコミたくなる。しないけど。 「はいはい。よろしくね」  ぶっきらぼうな態度でわたしは手を挙げて応える。あまり深く関わりたくないのだ。周りから変人扱いされるから。
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