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まあ、どっちにしても今の宇佐見くんと会話は成立しなさそうだけど。彼の両耳のイヤホンから漏れる音色がそれを証明している。また理解不能な洋楽を聴いているんだろう。
「はあ~」
窓際の一番うしろという最高のポジションに似つかわしくない溜息を吐く。まさか席替えで、よりにもよって宇佐見くんがとなりだなんて。ついてないにもほどがある。己のくじ運のなさを呪いたくなった。
これから毎日のように宇佐見くんのヒップホップにつきあわされるのか。想像するだけでうんざりする。
そんなわたしの心境におかまいなく、宇佐見くんはリズムに乗って両手と体を小刻みに揺らし、ぶっでゅくしくしぶぶでゅくしでゅでゅでゅくし、とボイスパーカッションに熱中しはじめた。
にしてもまあ、よく先生にバレないものだ。呆れを通り越して感心してしまう。注意して見ると、ラジカセをカバンに入れて机の下に置いたり、それにイヤホンをつなげたり、と工夫しているけど。となりのわたしからはモロバレだ。
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