宇佐見くんのサグライフ

7/8
前へ
/8ページ
次へ
 間延びした声が聞く。 「なんだか黒板の字が見えにくいので、前の席にしてもらえませんか?」  幸いかどうかは別として、わたしは視力が悪い。だからこう訴えれば、座席の変更ができる。本当はメガネをかけていれば問題ないけど、それは秘密だ。  さらに、この席は目立たないため授業をサボりたい生徒から人気なのだ。変わってくれる人は必ずいるはず。 「んー。ま、いいだろう。けど、そういうのは早く言えよ」 「すみません」  やったー。最高のポジションを失うのは残念だけど、これで宇佐見くんのヒップホップコミュニケーションから逃れられる。 「んー。じゃあ、そのまま最前列に移動しろ。あー、それと、宇佐見。おまえも一緒に最前列に移動な」 「ホワイ!?」 「ッ! ええええええ!?」  思いもよらぬ発言に、宇佐見くん以上に驚いてしまった。なぜそうなる! 宇佐見くんも同じ気持ちなんだろう。 「ユーノーワットアイムセイング?」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加