第1話

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ちょうど30歳のころ、だな、 このジムで働きはじめたのは。 俺は大学を出て プロサッカー選手になった。 だが、プロの世界は厳しい。 30歳、なんとかサッカーで食べていたが、それももう限界だった。 その年に結婚して、子どももできた。 サッカーに比べたら、結婚もジムの仕事も俺にとっては大したことではなかった。 課長とは同い年だ。 彼も大学テニス界では名の通ったテニスプレイヤーだった。 だが、課長はプロプレイヤーの道を目指さず、すぐにこのジムに就職した。 だから、職歴は課長の方が長い。 でも俺はどうしても認められない。 そんなに実力があったのに、それ試しもせず こんな楽なとこで働いてきて、 自分より立場が上?同い年なのに? けっ。納得できないね。 俺は、ここまで目標通りにすべてこなしてきた。 結婚も子どもも。 だが、妻のことをそこまで愛しているかと言われると、そうでもない。 子どもも新婚のころにつくってから、その後は全くそんな気がおきない。 自分の目標は達成してきたのだが、何かぽっかり心に穴があいていた。
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