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「こんにちは!ありがとうございます!」
「こちらですか?はい、わかりました。」
受付の様子を伺いながら、パソコン入力を進める。
よしよし、順調そうだな。
あ、そういや行ってらっしゃいませって言ってねーな。
別にそんな重要なことでもないけど、
なんで言わねーのかなー。
よくよく見てみると、そのタイミングで彼女はうつむき気味に適当なことを言っている。
あー、ひょっとして言いたくないのか。
しかも、言わなきゃいけないことも自覚してるっぽいなー。
俺の中でイタズラ心がむくむく芽を出す。
次の客が来たタイミングで、彼女の後ろにすっと近づく。
そして、耳元で
「行ってらっしゃいませって言って。」
と、囁く。
彼女は、一瞬固まった。
でも前には客がいるので、こちらを振り向かず
その客に聞こえるか聞こえないかぐらいの声で
うつ向きぎみに、
「行ってらっしゃいませ。」
と言った。
わ。耳まで赤いじゃん。あんだけでそんなに照れる?!
彼女の顔を正面から見たくて、少しの間振り向かないかな。と見ていたが、彼女は恥ずかしそうにうつ向いて固まっていた。
その横顔が新鮮すぎて、不覚にも俺も少し固まってしまった。
だんだん見ている内に勝手に口がにやけてきた。
今の顔は流石にまずいな。
俺はデスクに戻る。
なにこれ。
にやにやが止まらない。
席に座ってから、彼女の後ろに立った時の甘い香りを思い出した。
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