第1話

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「こんにちは!ありがとうございます!」 「こちらですか?はい、わかりました。」 受付の様子を伺いながら、パソコン入力を進める。 よしよし、順調そうだな。 あ、そういや行ってらっしゃいませって言ってねーな。 別にそんな重要なことでもないけど、 なんで言わねーのかなー。 よくよく見てみると、そのタイミングで彼女はうつむき気味に適当なことを言っている。 あー、ひょっとして言いたくないのか。 しかも、言わなきゃいけないことも自覚してるっぽいなー。 俺の中でイタズラ心がむくむく芽を出す。 次の客が来たタイミングで、彼女の後ろにすっと近づく。 そして、耳元で 「行ってらっしゃいませって言って。」 と、囁く。 彼女は、一瞬固まった。 でも前には客がいるので、こちらを振り向かず その客に聞こえるか聞こえないかぐらいの声で うつ向きぎみに、 「行ってらっしゃいませ。」 と言った。 わ。耳まで赤いじゃん。あんだけでそんなに照れる?! 彼女の顔を正面から見たくて、少しの間振り向かないかな。と見ていたが、彼女は恥ずかしそうにうつ向いて固まっていた。 その横顔が新鮮すぎて、不覚にも俺も少し固まってしまった。 だんだん見ている内に勝手に口がにやけてきた。 今の顔は流石にまずいな。 俺はデスクに戻る。 なにこれ。 にやにやが止まらない。 席に座ってから、彼女の後ろに立った時の甘い香りを思い出した。
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