第1話

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「ねぇ、山下さんって何歳?」 「25です。」 俺は彼女が萎縮しないよう、 一旦距離をとって話しかけた。 「25!」 25歳って俺と10個違うってこと! 何それ若っ! 平成生まれと聞いていても、 実際の年齢を聞くと、自分との差がより明確に感じられる。 うわ。無いわー。 無い無い。 俺の10年前とかと同じってことでしょ。 怖いわー。 若すぎる。 一瞬でも手に入るかも、と思った自分が怖い。 ってか、俺そんな気だったんだ。 とそんなことを考えている自分自身にも驚いた。 今月末には妻と息子の誕生日がある。 プレゼントに遊園地へ連れていこうと思っている。 一泊旅行のつもりだ。 二人とも楽しみにしている。 俺だって楽しみだ。 俺は、急いでシフトを見直した。 なるべく彼女と同じ勤務にならないように調整することに決めた。 明日、代わってもらえないか課長に交渉しよう。 俺は自分が少し怖かった。
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