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でも、とにかく二人きりになると、わたしも少し心が緩む。
彼との会話はわたしにとって勉強になるし、なにより面白い。
仕事の話、トレーニングの話、サッカーの話。彼のこどもの頃の話、選手だった頃の話。今の話。
二人きりになる時間、わたしは少しずつ彼を知っていく。
その度、どうしても惹かれてしまう自分がいる。
たまに顔を出す少し甘えん坊なところ
すごく真面目なところ
やっぱり大人なところ
困っていたら、すっと隣から助けてくれるところ
意外とパソコンもできるところ
わたしとは全然違う不思議なセンス
彼は魅力的だった。
いつも必ず彼はわたしを笑顔にしてくれた。
気付けばわたしは、柔らかな笑顔と、甘い視線を彼に向けていた。
ぎゅっと見つめると、負けじと見つめ返す彼。
目をそらす時に、にやけて笑う。
そんな甘い時間がわたしと彼の間に流れるようになった。
ただ、言っておくがわたしと彼は連絡先も交換していないし、職場以外で会うこともない。
身体に触れたこともないし、あっても手の先が少し掠めるぐらいだ。
いたってプラトニックである。
わたしは、彼が恋愛ごっこを楽しんでいることはわかっている。
けれども、少し何かを期待してしまう自分がいる。
わたしが感じる甘い時間を、彼も同じように共有しているように思ってしまう。
だけど、たまに聞く家族のはなし。
クリスマスの手作りケーキ
サンタのプレゼント計画
誕生日のディズニーランド
幸せがいっぱい。
わたしは、その度現実に戻る。
心の手綱を引き締める。
彼にとってはただの遊びだ。
25歳独身のわたしに、そんな遊びをしている余裕などない。
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