親父の宣告

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「ただいま」 俺が帰宅したのは十九時だった。 玄関からリビングに行くと、俺の親父がダイニングルームにあるテーブルに座り、もうご飯を食べていた。 いつも親父は、会社から二十時に帰ってくるので、正直この時間に家にいるのは珍しかった。 俺は無言のまま、冷蔵庫に行き、ノンアルコールビールを右手に取り、テレビのリモコンを左手に取ると、チャンネルを変えた。 今日はいつも俺が見ているバラエティー番組があってそれを観ようとした時だった。 俺がソファにドサっと座ると同時に、「ほんまのバカ殿が!大概にせいよ」とダイニングルームの方から、親父の怒号が飛ぶ。 「いきなりなんだよ」 「お前、就職した会社辞めてもうどれくらいたっとるんや?」 「え、一年だけど」 「一年だけどじゃあるか!家でいつもゴロゴロ、変な時間に起きてきやがって、ごそごそしやがって」 「なんだよ。急にキレだして、うざぁ」 「お前マジであと半年以内にこの家出てけ。一ヶ月ごとに少しずつ棄てる。半年経ったら、お前の物はもうこの家に一切置かんからな」 「はぁ?マジでわけわからんし」 だが、俺はこの親父の言うことを対して気にも留めていなかった。 俺が社会人になって二年、就職してたった一年で会社を辞めてから、俺は全く働いていない。 毎晩、友達と遊んだり、ゲームに夢中になったりと日々を謳歌していただけなのだが、その堕落した息子の生活に親父は怒り、終止符を打とうとしていた。 ―――親父の宣告から一ヶ月が経過した。 俺はまだ定職についていない。 この日、俺の部屋以外に置いていた漫画が消え、ブックオフのレシートと僅かに売った物のお金が俺の机の上に置かれていた。 親父の決意が本気であることを自覚したのはこの時だった。 俺は慌てて二階から一階に降り、母さんに訴えた。 「ちょっと、なんで漫画勝手に売ってるんだよ」 「お父さんに言われたでしょ?」 「いや、だけど普通なんか一言言うもんじゃないの?」 「お父さんはもう宣告したんだって言ってたわよ。タイムリミットはあと5ヶ月だって」 母さんは食器を洗いながら、俺と目を合わせることも無くそう言った。 ―――家族全員がもはや俺の敵だった。 (最悪だ…この世の終わりだ…)
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