朝には朝の、夜には夜の(side7)

3/7
74人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
 俺のことを好きだって言わない誰かの肌に触れたい。いいようにしたいしされたい。  でも初めて会った奴に対し、これからそういう風にもってって、場所を確保し(ホテルとか?)なんかそういう手続きいろいろ?そういうのが面倒だなとも思い初めていた。  昔だったらどうとでもなったのにね。案外俺も大人だね。いろんなことを億劫に思うお年頃。新しいこと始めるの大変。人との出会いも。  結局、お誘いがあったにもかかわらず、バーを出た。  タクシーを拾わずに歩く。  後悔が押し寄せる。  やっぱどっちかとでも寝たほうがよかったかも。  そうしてハメをはずした方が、発散できたかも。  俺はそんなことを思いながら、とぼとぼと白みはじめた夜を歩いた。  ここ数日まともに寝ていない。  どんなに激務でも、スペースさえあれば眠れたこの俺が。  会社員時代は、床に段ボールをひいて寝た。3、2、1、で眠れた。こまぎれの睡眠でも大丈夫だったのに。  そんな健やかな俺も一度だけ不眠に悩まされたことがある。  それはやけに背の高い男と身体は小さいのにハートのでっかい女が解決してくれた。  あの時以来だ。  たぶん、いろいろ疲れているんだろうと思う。会社をやめて、一人でやっている。仕事は順調な方だ。ただメンタルがついてゆかないのだ。  いざ眠ろうとベッドに入っても、頭が寝ようとしない。いろんな思考が瞼の裏で走り続ける。意識はずっと覚醒している。  こんな状態で修司のいる家に帰りたくなかった。  何でも見透すような目。深い夜みたいな目。  そんな目に魅かれて今に至るわけだけど、やっぱ嫌い。見ないでほしい。  それでも帰るところは一つなわけで、俺は渋々家に帰った。帰宅して真っ先に修司の靴を見つめる。  どんどんつらくなる。  奴と顔を合わせたくない。弱ってる自分を見られたくない。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!