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俺は年上に憧れる性質(たち)だった。 騎士学校の三年間は最上級生の先輩のファンだった。 試験に受かり、騎士になればすぐに上級将校に憧れた。 その憧れのシューゲル少将に少しでも近づきたくて俺は頑張った。 騎士学校時代は小さく可愛らしく見られていた身体も、十八歳の成人の後に二十センチ以上伸び、大柄な者の多い騎士の中でも平均よりは少し高いくらいになった。 学生時代はとにかく、剣技が上手いものがもてはやされる。 けれど身体の小さな俺は、そこでは全く歯が立たず、自然と戦術や軍隊運営などのスキマを狙って自分を伸ばすようになった。 そしてそれが騎士採用後の、俺の目覚ましい出世につながった。 さらに、パワーでは負けるからと技術を磨いていた剣も、身体が大きくなったことによりパワーと技術を兼ね備えたものとなっていったのだ。 そして二十年経った今、俺は大佐となり部下に憧れられる立場となった。 俺が憧れたシューゲル少将は、今は大将となり、八年前から俺の直属の上官だ。 それにもきっかけがあった。 それまで全く接点がなかったが、中佐になったのに伴い配置換えとなった俺は、ようやくシューゲル大将に直接会う機会が多くなってきていた。 そして俺は気付いた。 シューゲル大将に近づきたくて出世しようと頑張っていたのに、いつの間にか出世が目的のようになっていて、胸を焦がした若い頃の憧れにをどこかに置き忘れていたのだ。 そのことに気付いた途端、くすぶっていた薪に火がつくように、忘れかけていた想いが再燃してしまった。 シューゲル大将の執務室を訪ねているうちに、大将の身の回りの世話をする従者のバスクさんとも顔なじみになった。 もうすぐ五十になるという、陽気で優しく素朴な男性だ。 しかし、ずっとただの従者だと思っていたら、シューゲル大将の執務室でバスクさんがソファに押さえつけられ、触られまくっているのを目にしてしまった。 いや、シューゲル大将がわざと俺に見せつけたんだ。 俺は中佐になるまで、とにかく出世出世の真面目でお固いタイプだとまわりに思われていた。 そんな俺をからかっての所行だった。 若い頃から憧れ続け、あんなに近づきたかったシューゲル大将は、とんでもない雑兵食いだった。 騎士には目もくれず、農村出の素朴で男らしい雑兵に目をつけては、ネコに仕込んでいくのが大好きで、今は四人のネコを飼っているらしい。
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