File.2 右目の力

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「すいませんー」 入り口からそんな声がして、読んでいた書物に栞を挟んで僕はそれをテーブルに置くと立ち上がった。 「はい」 「安倍文殊院に行きたいんやけど、道がわからんくてここからどの道に行ったらええんかな」 店先に出ると、二人、女性が立っていてそう訪ねられた。 見た目はうちの母さんくらいで、手には地図を持っている。 「歩いたら女性だと30分くらいかかりますよ」 「いややわ!女性って!」 きゃはは!と目尻を下げて笑う二人をみて僕も微笑む。 関西人の標準語に対する反応が毎回すぎて呆れる。
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