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「凄いよ、凄い、気に入ったよ」
里田の言葉を皮切りに、肩から力が抜けて。
一緒に色んなものが抜けてく。
ありがとうな、里田。
ナチュラルなストレートのサイドに斜め前髪、
我ながら上手い仕上がり。
口のでかいあの男が知らない里田の出来上がり。
「こうすると、少し大人っぽくなるんだ」
片方の横髪を少し耳にかけてあげる。
出来上がった里田は、予想以上に大人っぽくて、うっかり見惚れてしまう。
我ながら完成度が高いなぁ、うんうん。
「ほんとだー。凄い。高河君、魔法使いみたいだよ」
お前の方が魔法使いだ。
お前に、こんなこと出来ている俺がいるんだから。
「さらに、こうすると」
顔にパフをあてて、紅筆を構える。
大人っぽい里田が目を瞑る。
ホント、危なっかしい。
里田の顔を見つめる。
3年間、眼鏡越しに朝の電車でいつも遠目で見ていた里田が目の前にいる。
ああ、そうだったんだ。
今さら、なんだよ。
俺は自分の心にも眼鏡かけてたんだな。
嵯峨山が言うように、3年間、顔面引きこもってる場合じゃ無かったよ。
俺、里田のこと、好きだったんだ。
淡いピンクのグロスを、お前の唇にのせる。
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