2人が本棚に入れています
本棚に追加
駅から高校まで続く、ダラダラした上り坂をのぼるのも、あと一か月もない。
来月の今頃は、みんな違うところに居るなんて、
なんか、すげぇ変な感じ。
「涼、おはよう」
あ、元カノの嵯峨山千愛さん、
「おはよう」
まあ、付き合ってたのは、中学ん時、少しだけだけど。
あん時より見かけイイ女になりやがった。
「あのね、何回も言って悪いんだけれど」
「ん?」
またか。
「その伊達眼鏡、もう要らないと思うよ」
朝からウザいなぁ、無視無視。
「大丈夫。誰も中学の時みたいな子供じゃ無いよ」
「カンケーねーよ」
カバンを持たない右の手で、軽く眼鏡を押し上げる。
「イケメンなのに、美味しい時期に顔隠して、もったい無い」
お前にイケメンなんて言われても全く嬉しく無い。
「俺はこの方が良いんだ……」
「いつまでも、顔面、引きこもってんじゃないわよ!」
「ああ?」
俺の返事を待たず、朝からお怒りの嵯峨山はスタスタと先に行ってしまった。
『俺はオメェみてぇに強かねぇんだよ』
眼鏡越しに前を見つめる。
くそぉ、良いケツしてやがる……。
「あー、坂、キツー」
お前に言われなくても、わかってんだよ、チナ。
最初のコメントを投稿しよう!