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夕方の中学校は、まだ明るくって。
クラブが終わった俺は、付き合い始めたチナが待つ教室に急いでて。
いつも良く喋りかけてくる俺の取り巻きと自称する女どもと、すれ違ったけれど珍しく会話をせず。
息切らして。
教室の扉を開けたら、そこには、
少し乱れた机を揃えるチナの後ろ姿。
「チナ、お待たせー」
俺は、後ろからチナに抱きついた。
華奢な身体が俺の胸に収まる。
『あー、気持ちいー』
触れれば触れるほど、もっとチナが欲しくなる。
「涼、あのね」
「ん?」
チナの旋毛に顔を埋める。
チナの匂いがする。
「私、無理。涼と付き合うの」
「えっ?」
慌てて、チナの前に周った。
昨日、からかい過ぎたからかな?
「どうして?俺のこと、、ヤになった?」
床を見つめたまま顔を上げないチナの
両頬に手を伸ばす。
チナの体が小さくピクンと震える。
俺の中にキンと痛いものが走った。
そっとチナの顔を持ち上げる。
胸がザワザワする。
俺を見上げたチナの前髪は、
ザクザクに切られて、斜めになっていた。
「涼の取り巻きに……」
チナの目には涙がいっぱいで。
俺の大切なチナが、
俺のせいで、ザクザクにされたその日から、
どうしたら良いかわかんなくて、
チナに会いたくて会いたくて仕方ないのに、
家から出ようとすると苦しくって、
立てなくって、
動けなくって、
チナを助けに行けなかった。
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