第1章

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「最悪だ…この世の終わりだ…」 僕は部屋で呟いた。 もはや何も耳に入ってこず、賑やかな場面が刻々と移り変わってゆく。 それを見ているようで見ていない。否、見ているけれど、頭に入ってこないのだ。 「   …」 もはやこの呟きは声になっていたかも分からない。 そんなこと最早僕にとってどうでもいい。 「なんで…どうして…」 冷たいものが掌に当たった。 ああ、泣いているのだ、と思った。 泣いたのはいつぶりだろうか。 小学生以来かもしれない。 近所のお姉ちゃんに、男はめったに泣くもんじゃない、と言われて以来。 今回はその“めった”だ。許してくれるだろう。 …今頃彼女はどうしているだろうか。 そんなこともどうでもいい。 ただ今大事なのは、彼と、僕がいま悲しくて悲しくて仕方がないということだけだ。 「フィル…」 どうして君は死んだんだ。 今まで、誰よりも強くて、勇敢で、みんなから頼りにされていた君が。 「武史―!ご飯よー!!」 お姉ちゃんの声がドア越しに響いて、はっと我に返ると、エンディングはとっくに終わっていた。 フィル。 僕が一番好きだったアニメキャラの名前。
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