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だが、バス停までの5分間、大丈夫じゃなかった。雪だし風も強いから傘は持ってきてない。マフラーのおかげで首は暖かいが顔に雪が当たって痛い。しかも、冷気と雪のコンボで熱が奪われていく。踏み固められた足元は滑りやすく、普段よりも歩くのに時間がかる。
やっとバス停が見えてきて横断歩道を渡れば到着という時、信号が赤になった。そして、無情にも乗る予定だったバスは目の前を通り過ぎていった。
屋根も椅子も無いバス停で待つこと十数分。次のバスがタイヤチェーンの音を響かせながら来た。やっと暖かい場所に行けると安堵したがドアが開いて愕然となった。社内は寿司詰め状態でドアのステップ付近に隙間がある程度だったからだ。駅まで30分。できれば満員状態で立ちっぱなしは避けたい。でも、これを逃せばまた雪の中だ。俺は、覚悟を決めてバスに乗った。
人に揉まれながらも必死に吊革にしがみつき駅に着いた俺は自分の運のなさを呪った。バスに続き列車にも嫌われているようだ。
「K倉行き列車、発車します。次の列車は雪のため30分遅れで到着予定です。予定は変わることがありますので駅員にお尋ね下さい」
切符を買い改札を出ると、列車の走る音とアナウンスがそう告げたからだ。電光掲示板を見ると次のK倉行きは9時30分到着(遅れ30分)となっていた。時計を見ると9時15分だ。ダイヤは乱れまくってるようだ。
とりあえず、ホームへ出た。屋根があるだけましとは思ったが、冷たい北風に負けて待合室に入った。椅子はすでにうまっていて座ることは出来ないが、暖房が効いてるのが有り難い。ポケットの中で冷たくなっていたカイロも息を吹き返し少し熱いくらいだ。
20分程そこで立ったまま過ごしたが、人が増えて出入口が塞がれていたので待合室を出た。始発に乗るとはいえ、良い席に座るには少しでも早く並んでおきたいからだ。いざ乗る時に出入口に人が多くて待合室から出れなくなったら嫌だと思えば寒さは気にならなかった。ただ、熱気のせいか喉が乾いたので小さいペットボトルのお茶を1本買った。カイロの代わりにもなるだろうと思い買ったのだが、これが運命の分かれ道になるとは思っていなかった。
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