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翌日、知らない番号から電話がかかってきた。
『もしもしお元気してますか~。麻井です~。』
どうして電話番号を知っているんだ。急に怖くなってくる。
麻井さんは話を続けた。
『こちらの準備が整いましたので、今迎えに行きますねぇ~。』
ぶつ、と音がしたので振り向くとニコニコと笑っている麻井さんがいた。
「では、行きましょう~。」
麻井さんについて行くと、だんだんさびれた風景が多くなってきた頃、麻井事務所と書かれた看板が目に入った。
中に入ると埃が多く、俺は咳き込んだ。
「そちらに座ってください~。」
「は、はい。」
この前はつい承諾したが、いざ冷静になってみると怖い。
臓器売買とかとんでもないことを言い出すんじゃないだろうか。
いや、人の人生を変える職業だから、もう少しまともなプランを用意してくれそうではあるが。
「具体的なプランについて話しますね。」
麻井さんは真剣な顔をして話し始めた。
「あなたには人生を要所要所だけ修正しに戻ってもらいます。」
「・・・修正!?」
「はい。こちらで最高に最幸なルートを調べてプランを練りました。」
「か、過去に行くということですか!?」
「少し違いますよ~。『過去に行く』のではなく『過去に戻る』ですから~。
実際してみれば分かって頂けると思うので、もう行ってもらいましょうか~。」
えっ、と言う間もなく俺はデコピンを食らった。
「どうしてデコピンするんですか!?」
「儀式みたいなもんですよ~。」
すると意識がだんだん薄れてきた。
意識が途切れる直前、麻井さんは少し、いや俺の気のせいかもしれないが、悲しそうな顔をした。
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