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ふと水槽の2匹の金魚を見た。オレはうまそうだと思った。
ためしに一匹を手ですくい上げた。そのまま―――生きたまま食った。
噛むのは抵抗があった。それで丸呑みにした。それでも口の中は生臭さでいっぱいになる。
だが―――変化があった。これまでにない変化が。
あれほど何を食っても満たされなかった空腹感が、ほんの少しだがやわらいだのだ。
魚だ。オレは思った。魚を食えばいいのか。オレは近所のスーパーに行って
サバの煮付けの缶詰を買って、さっそくアパートに帰って食ってみた。
だが変化無し・・・だめだ。やはり空腹感は満たされない。オレはまた水槽を見た。金魚はあと一匹いる。
その金魚は前に喰ったヤツより一回り大きい。その金魚を手ですくった。
手の中で暴れる金魚は、まさに生きている。命が手を伝わって、そこに確かにあった。
オレはその最後の金魚を口に放りこんだ。さすがにでかいだけあって、
一口では飲み込めない。仕方が無い。オレは腹が減ってるんだ。飢えているといってもいい。
オレは金魚を噛み砕いた。口の中で臓物と骨とが血に混じりあって
ものすごい生臭さを飛散させた。でも、飢えのほうが勝った。オレは金魚を飲み込む。するとどうだ、
空腹感がやわらぐじゃないか・・・・・。
オレはようやく理解した。飢餓をやわらげるには、生きたものを生きたまま喰えばいいのだ。
そうすれば、飢えることはないのだ。
だが、何を喰う?何を生きたまま喰う?毎日金魚ばかり喰うわけにもいかない。
腹いっぱい喰うとしたら、何十匹喰えばいい?まず、オレにそんなにたくさんの金魚を買う金も無い。
もっと効率良く、金もかからない方法はないか?
そうだ、釣りだ。魚を釣ってそのまま喰えばいい。オレはさっそく釣具店に行った。
一番安い釣竿とエサのゴカイを買った。近くのため池に行く。釣り針にゴカイを突き刺し、糸を垂らした。
ゴカイは生きたままだ。このミミズに似た生き物を見ていると、無償に食欲が湧く。
オレはふと思った。こいつらも生きている。グロテスクな姿をしているが、喰えないことはないだろう。
オレは1匹手に取ると口に放りこんだ。するとそいつはオレの舌に噛み付いてきた。
その痛みと食欲で、オレはゴカイを噛み砕いた。泥を喰うと、きっとこんな味がするんじゃないかと
いうような味がした。口の中いっぱいに生臭さとジャリジャリという食感が広がる。
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